映画公開当初、ネット上や映画評論コミュニティでは一部のキャストについて賛否両論が巻き起こったことも事実です。特に宗介の父・耕一を演じた長嶋一茂の起用については、「棒読みではないか」「本職の声優を使うべきだった」という手厳しい声が映画レビューサイト等で見受けられました。
しかし、映画関係者やジブリファンによる近年の再検証では、その評価は大きく逆転しています。長嶋一茂が演じた耕一は、決して雄弁でも器用でもない、海の男としての無骨さと不器用な家族愛を持つ男です。船の上からモールス信号の点滅でリサへ必死にメッセージを送るシーンにおいて、洗練された声優の演技では出せない「生の照れ」や「不器用な感情の引っかかり」が、長嶋の地の演技によって驚くほどリアルに立ち現れていたと再評価されています。
また、老人ホーム「ひまわりの家」に暮らすお年寄りたちを演じた吉行和子、奈良岡朋子、左時枝らの芝居は、まさに日本演劇界の至宝による競演でした。車椅子生活に苛立ちながらも宗介を心から可愛がるトキさん(吉行和子)の皮肉混じりの優しさや、包み込むようなヨシエさん(奈良岡朋子)の温もり。これらの重厚な台詞回しがあったからこそ、子ども向けアニメーションの枠を遥かに超えた、老いと生を巡る人間ドラマとしての厚みが生まれたのです。