「なぜ、白ひげやビッグ・マムと同格の怪物が黒ひげに敗れ去ったのか」。この疑問こそが、王直を巡る最大のミステリーといえます。その舞台となったのが、ルフィたちが離散していた2年の間に発生した王直とロッキーポート事件です。
原作第1059話において、アマゾン・リリーに現れた黒ひげ(ティーチ)は、居合わせたコビー中佐(現大佐)に対して不敵な笑みを浮かべながら次のように言い放ちました。「お前のお陰でオレは『王直』を倒し海賊島のボスになれた」。この一言により、王直がハチノスで黒ひげと激突し、その結果として本拠地を奪取された事実が白日の下に晒されたのです。
この事件の構図を紐解くと、極めて複雑な利害関係が交錯していたことが分かります。事件の首謀者は「死の外科医」トラファルガー・ローであり、ローはこの事件を契機に王下七武海への加入を果たしました。一方で、市民を守るために現場で奮闘したコビーは英雄として世界中にその名を轟かせることになります。この三つ巴の極限状態において、黒ひげはコビーの予期せぬ行動によって生じた間隙、あるいは王直側の防衛網の乱れを冷徹に突き、ハチノスの支配者を玉座から引きずり下ろしたと推測されます。
真っ向勝負のタイマンで王直が力負けしたというよりも、ローの計略、海軍(コビー)の介入、そして黒ひげの狡猾な奇襲と「ヤミヤミの実」「グラグラの実」の破壊力が複合的に作用した結果の陥落であったとみるのが妥当です。かつてロックス海賊団という一枚岩ではない集団で生き抜いてきた王直にとっても、新世代の野心と策略が乱反射したロッキーポートの混戦は致命的な計算違いとなったと考えられます。