1993年から1996年にかけて『週刊ヤングマガジン』に連載された『行け!稲中卓球部』が、世代を超えて読者の心を掴み続ける最大の要因は、思春期男子が抱える「歪んだ自意識のリアリズム」にあります。主人公の前野や親友の井沢ひろみ、怪力巨漢の田中、体臭が兵器レベルの田辺といった強烈な稲中卓球部 キャラクター一覧の面々は、いわゆる王道の青春スポーツ漫画に登場する爽やかな英雄とは対極の存在でした。
とりわけ読者の脳裏に刻まれているのが、恋愛至上主義への怨嗟から結成された秘密結社「死ね死ね団」の真相です。頭部にパンダの被り物を装着し、デパートの屋上にあるようなコイン作動式パンダカーに跨がって街中のカップルを強襲・妨害する彼らの奇行は、一見すると荒唐無稽なナンセンスギャグに過ぎません。しかしその本質は、バブル崩壊後の日本社会に蔓延し始めた「持たざる者のルサンチマン」の純粋な具現化でした。恋愛強者への嫉妬を隠蔽することなく、全力で悪意のエンターテインメントへと昇華させた構造こそが、共感と爆笑の源泉となったのです。
1995年にTBS系列で放映されたテレビアニメ版は、夕方から深夜帯にかけて放送されたものの、当時の基準に照らし合わせても「放送事故一歩手前」と評されるほどの過激なシモネタとブラックユーモアを連発しました。制作陣の卓越した演出力と声優陣の怪演によって原作の毒気が見事に再現された一方、PTA等からの抗議も相次ぎました。コンプライアンス順守が徹底される昨今のメディア環境では、地上波ゴールデン・プライム帯はもちろんのこと、通常の深夜枠であってもオリジナル版をそのまま再放送することは極めて困難な水準に達しています。