宮内庁が厳格に管理する陵墓指定地は、長年にわたり「不可侵の聖域」として自由な学術調査が制限されてきました。しかし、2019年の世界遺産登録を契機に風向きは劇的に変化しています。宮内庁と堺市、羽曳野市、藤井寺市などの地元自治体による学術的な共同調査が定例化し、前方後円墳の発掘調査に関する最新ニュースは古代史ファンの枠を超えて大きな注目を集めています。
大仙陵古墳の第1堤で行われた共同調査では、堤の平坦面から精緻に作られた円筒埴輪列や、石敷きの祭祀遺構が次々と出土しました。さらに、2020年代半ばから急速に進展した非破壊調査技術の躍進は目覚ましいものがあります。航空機からの高精度LiDAR(レーザー測量)により、鬱蒼とした木々に覆われた墳丘の微細な段築や崩落箇所が3次元データとして丸裸にされ、設計段階のモジュール(尺貫法に基づく緻密な設計規格)が完全に再現されました。
さらに注目すべきは、素粒子を用いて巨大構造物をレントゲンのように透視する「宇宙線ミュオグラフィ技術」の古墳探査への応用実験です。墳丘を一切傷つけることなく、石室の正確な位置や規模、内部の空洞の崩落状態を把握するプロジェクトが進行しており、未盗掘の副葬品や未知の埋葬施設の手がかりが掴まれつつあります。
こうした古代ロマンの再評価は、現代のライフスタイルにも波及しています。近年では、歴史遺産としての鑑賞にとどまらず、自然に還る樹木葬と古墳の造形美を融合させた「古墳墓」を企画・提案する民間企業(株式会社前方後円墳など)が登場するなど、1700年の時を超えて「死生観の象徴」としての古墳が再解釈されるというユニークな社会的現象も起きています。