臨床現場において「鼻の肥大」を主訴、あるいは重要な身体徴候として発見される代表的な病気には、主に以下の2つが挙げられます。
1. 先端巨大症(アクロメガリー / 指定難病77)
脳の底部にある下垂体に良性の腫瘍(下垂体腺腫)が発生し、そこから成長ホルモン(GH)およびインスリン様成長因子-I(IGF-I)が過剰分泌される疾患です。難病情報センターの公式データによると、年間発症率は100万人あたり3〜4人程度と希少ですが、緩徐に進行するため発症から確定診断まで平均して数年から10年以上の歳月を要することが大きな社会問題となっています。
成長ホルモン分泌異常の理由は、大部分が単クローン性に増殖した下垂体腺腫によるものです。思春期を過ぎて骨端線が閉鎖した大人の体に成長ホルモンが過剰に作用すると、骨の長軸方向への成長は止まっているため、手足の先端や顔面の軟部組織・突出部が異常に増殖します。この下垂体腺腫による顔貌変化こそが、鼻や唇、額の肥大、そして下あごの突出を招くメカニズムです。
患者が最初に気づく先端巨大症の初期症状としては、以下のような兆候が典型的です。
- 鼻筋と小鼻の肉厚化:鼻全体が大きく横に広がり、顔つきが精悍を通り越して武骨に変わる。
- 唇・舌の肥大:舌が大きくなる(巨舌症)ことで発音が不明瞭になり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす。
- 末端のサイズ変化:靴のサイズが合わなくなる、愛用していた指輪が入らなくなる。
- 噛み合わせの悪化:下あごが前方に突き出て、前歯で食べ物を噛み切りにくくなる。
- 視野障害・頭痛:腫瘍が上方に進展して視神経交叉を圧迫し、視界の外側が見えにくくなる(両耳側半盲)。
2. 酒さ鼻(鼻瘤:びりゅう / Rhinophyma)
もう一つの代表疾患が、中年以降の男性に多く見られる「酒さ鼻」です。慢性炎症性疾患である「酒さ(しゅさ)」が長年にわたって進行し、その最終段階(第4期)として現れる病態を指します。
鼻周囲の毛細血管拡張から始まり、やがて脂腺(皮脂を分泌する腺)と結合組織が病的に増殖を繰り返します。結果として、鼻の頭が赤褐色から暗紅色に変色し、デコボコとした結節(こぶ)を形成してカリフラワー状に肥大化します。アルコールの多飲が引き金になると俗説で言われてきましたが、実際には体質や毛包虫(ニキビダニ)、紫外線や寒暖差など多様な環境要因が複合して発症する皮膚病態です。