他人の幸福や美しさを妬む眼差しが災いをもたらすという信仰は、民俗学の領域において邪視(イーブルアイ)と呼ばれ、古代メソポタミア文明にまで遡る。称賛の言葉の裏に潜む無自覚の嫉妬こそが最も危険だと信じられてきた。青い瞳を持つ外敵への恐怖がその造形の原点にあるとも言われるが、本質はもっと深い。視線には見えない毒がある。だからこそ、より強烈な「視線」を放つ目玉で睨み返し、悪意を跳ね返すというスピリチュアル・魔除けの論理が生まれた。
「ナザール」はアラビア語で眼差しを、「ボンジュウ」はトルコ語でビーズを意味する。この二つが合わさったナザール・ボンジュウは、ただ受動的に幸運を待つためのお守りではない。空間に漂う負の感情を真っ向から捉え、無力化するための能動的なシールドなのだ。