昭和から平成にかけてのお笑い界では、ハゲは「先輩から頭を叩かれてナンボ」「みっともなさを晒して笑いを取る」という身体的欠損の記号として扱われてきました。しかし、2020年代半ばから2026年に至る現在、お笑い界の価値観とコンプライアンス意識は激変しています。容姿いじりに対する視聴者の忌避感が高まるなか、薄毛の扱われ方にも構造的な変化が訪れました。
かつては「ハゲを治してしまうと仕事が減るのではないか」という芸人特有の恐怖心が存在しました。しかし、実際に治療を行って毛髪を取り戻した芸人たちに対するネットの反応を見ると、「清潔感が増して爽やかになった」「自分のコンプレックスに前向きに向き合っていてかっこいい」という称賛の声が圧倒的多数を占めています。SNSや掲示板でも、治療を隠して不自然な髪型を続けることへの違和感よりも、堂々と治療プロセスを開示する姿勢がポジティブに評価される時代になりました。
また、若手芸人が薄毛に悩む理由自体も変化しています。不規則な生活習慣や劇場出番のプレッシャー、慢性的な睡眠不足といった古典的な要因に加え、高画質のスマホ動画配信やSNSでの自撮り文化が定着したことで、早い段階から自身の生え際に危機感を抱くケースが増加しました。その結果、ハゲてから笑いにするのではなく、「ハゲる前に医学的に防ぐ」という合理的思考を持つ若手が主流となっています。