鼻のてっぺんに白い膿や硬い芯が透けて見えると、指先やコメドプッシャーで押し出したくなる衝動に駆られます。しかし、医療関係者の間では「鼻周囲の化膿病巣を無理に潰す行為は極めて危険」と強く戒められています。
医学界において、両口角と鼻根部を結ぶ三角形の領域は「危険三角(デンジャートライアングル)」と呼ばれています。この部位を還流する顔面静脈や眼静脈には弁構造が乏しく、頭蓋内の硬膜静脈洞の一つである「海綿静脈洞」へと直通しています。
化膿した毛包を強い力で押し潰すと、膿が体外へ排出されるだけでなく、毛包壁が破壊されて菌が深部の血管系へと逆流する恐れがあります。極めて稀なケースではあるものの、細菌が頭蓋内へ波及し、海綿静脈洞血栓症や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こすリスクが医学論文で報告されています。
また、強引な圧出は真皮層のコラーゲン線維を断裂させ、クレーター状の陥没瘢痕やメラニン沈着による頑固な色素沈着を鼻頭に生涯残す主因となります。美観を取り戻すための行為が、取り返しのつかない傷跡を刻む結果になりかねません。