読者の多くが混同しやすいのが、「ダウン症(21トリソミー)などの染色体異常症」と「自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害」の性質の違いです。この二者は発生機序、診断方法、予測可能性のいずれにおいても全く異なる医学的領域に属しています。
ダウン症をはじめとする数的染色体異常は、卵子の減数分裂時のエラーに起因する割合が高く、母親の年齢とともに指数関数的に発生率が上昇します。対して自閉スペクトラム症の原因は、数百種類に及ぶ微細な感受性遺伝子と、子宮内環境や周産期因子といった環境要因が複雑に絡み合う「多因子疾患」です。染色体全体の本数の過不足ではなく、微小な神経ネットワークの個性であるため、両者を同列に語ることは医学的に誤りです。
また、妊娠初期に行われるNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)の普及により、「出生前診断を受ければ子どもの障害がすべて事前にわかる」と信じ込んでいるケースも散見されます。しかし、出生前診断でわかることは、特定の染色体異常(21、18、13トリソミーなど)の確率判定に限定されており、発達障害の有無を調べる手段は現代の先端医学をもってしても存在しません。以下の比較表で、両者の決定的な差異を明確に整理しておきます。