赤塚植物園を訪れる際、本園だけで散策を終えてしまうのは非常にもったいない選択です。道路を挟んだ周囲には、特徴的な2つのサブエリアが隣接しており、それぞれ異なるコンセプトで整備されています。
なかでも学術的・知的好奇心を満たしてくれるのが板橋区立赤塚植物園の万葉薬用園です。ここには、日本最古の歌集『万葉集』に詠まれた草木と、古くから人々の健康を支えてきた薬用植物が集められています。それぞれの植物には、万葉集の代表歌が記された解説板が添えられており、古代の人々がどのようなまなざしで自然を見つめていたのかを追体験できます。教科書で目にする紫草(ムラサキ)や片栗(カタクリ)の実物を間近で観察できる空間は、大人の知的好奇心を刺激してやみません。
さらに「農業園」では、かつて赤塚地区に広がっていた近郊農業の営みを伝える作物が育てられており、伝統野菜や果樹の栽培風景が保存されています。都会の真ん中で「森」「文化」「農」が歩いて数分の距離に凝縮されている構成は、東京23区内でも極めて稀有なレイアウトです。