押切もえのキャリアを語る上で欠かせないのが、同時期にCanCamのツートップとして並び立った蛯原友里との「エビもえ」コンビです。この2人が巻き起こしたムーヴメントは、単なる雑誌のヒットを超えた消費社会のビッグウェーブでした。
当時、日本中の女子大生や丸の内・銀座のOLたちが彼女たちの着用した服やバッグを買い求め、掲載アイテムが瞬時に完売する「エビ売れ」「もえ売れ」が連日ニュースを賑わせました。愛され清楚系の頂点に君臨した蛯原友里に対し、押切もえは「少し大人っぽく、自立した芯の強さを持つお姉さん系」という絶妙なポジションを確立。この2つのキャラクターが読者の憧れを二分し、CanCamは月間発行部数80万部を突破する金字塔を打ち立てました。
当時の現場を知る編集者やアパレル関係者は、彼女のプロ意識の高さを次のように証言しています。
「エビちゃんが天性の華やかさを持つアイドル型なら、もえちゃんは現場の空気を察知して服の魅力を最大化させる職人型でした。ギャル時代に培った『どう見せれば自分が一番目立てるか』という過酷なストリートの生存本能が、読者の心理に刺さるポージングの引き出しへと昇華されていたのです」
単なるシンデレラストーリーではなく、現場での徹底した自己分析と泥臭い努力があったからこそ、彼女は「元ギャルの反逆児」から「全女性の憧れ」へと自らの手で運命を切り拓くことができたのです。