本作の結末を成立させる上で、物語最大のターニングポイントとなったのがうさぎドロップ 血縁関係の真相です。物語の冒頭、りんはダイキチの祖父・宋一が晩年に家政婦の吉井正子に産ませた「祖父の隠し子(ダイキチにとっては叔母)」として登場しました。もしこの設定が生きていれば、2人は3親等の親族となり、日本の民法上、婚姻は法的に不可能です。
しかし、第2部終盤において、実母である吉井正子の手記や関係者の証言から衝撃の事実が判明します。りんの実の父親は宋一ではなく、正子の従兄弟である「正木」という別の男性でした。宋一は身寄りのない正子とりんを保護していたに過ぎず、ダイキチとりんの間には生物学的な血の繋がりが1ミリも存在しないことが医学的・法的に確定したのです。作者の宇仁田ゆみ氏は、この出自の秘密を明かすことで、2人が結ばれる法的・生物学的な免罪符を用意しました。
この展開の陰で、多くのファンが胸を痛めたのが幼馴染であるコウキとりんの結末です。幼少期から家族ぐるみの付き合いを続け、同じ高校に進学した二谷コウキは、長年にわたってりんに一途な好意を寄せていました。思春期の葛藤を経てコウキはりんに真正面から告白しますが、りんの心には最初からダイキチしか存在せず、あえなく玉砕します。
さらに切ないのは親世代の結末です。ダイキチとコウキの母親(二谷さん)は、互いに好意とリスペクトを抱き合っており、大人同士の再婚が極めて自然な流れとして期待されていました。しかし、「子どもたちの生活環境を第一に守る」という慎重な姿勢を貫いた結果、2人の恋は実ることなくフェードアウトしました。幼馴染の淡い初恋も、大人同士の成熟した再婚ルートも完全に断ち切られ、すべての感情線がりんとダイキチの結合へと収斂していったのです。