親王飾り(平飾り一段)は、並べるパーツが厳選されているからこそ、ミリ単位の配置バランスが空間の格調を高めます。台座の上に配置するアイテムは、奥から手前に向けて3つの階層(レイヤー)で捉えると迷いません。
最奥の背景にはまず「屏風(びょうぶ)」を立て、その両端前方に「雪洞(ぼんぼり)」を配置します。ぼんぼりの位置は、「男雛と女雛の外側、斜め後ろ」に置くのが空間を立体的に見せる黄金比です。屏風の端を少し内側に折り、ぼんぼりでその角を柔らかく隠すようにセッティングすると、中央のお人形に視線が集まる美しい遠近感が生まれます。
中列の主役が「親王(男雛・女雛)」です。敷物である親王台(畳台)の上に鎮座させますが、男雛の手には「笏(しゃく)」を持たせ、腰に太刀を差します。女雛の手には開いた「檜扇(ひおうぎ)」を持たせます。扇の紐は両脇へ流れるように整え、十二単の裾が美しく広がるよう指先で優しく形を整えるのが見映えを格段に引き上げる現場のテクニックです。
そして最前列を彩るのが「前飾り」と呼ばれるお道具類と植物です。中央にお祝いのお神酒とご馳走を供える「三方(さんぽう/三宝)」を置き、その両隣に「菱餅(ひしもち)」を配します。菱餅の配色は下から「緑(大地)・白(雪)・桃(桃の花)」の順になっており、「雪の下から新芽が芽吹き、雪の上に桃の花が咲く」という春の訪れを象徴しています。
最後に両端を締めるのが「桜橘(さくらたちばな)」です。ここで最も間違いが多いのが左右の配置ですが、合言葉は「左近の桜・右近の橘(さこんのさくら・うこんのたちばな)」です。これは京都御所の紫宸殿前庭に植えられている樹木に由来し、「帝(お人形)から見て左が桜、右が橘」を意味します。したがって、私たちが正面から向き合った視点では「向かって左が桜(ピンク)、向かって右が橘(緑の柑橘)」となります。この前列の対称性が整うことで、一段飾り全体の格式が一気に完成します。