体脂肪率が15%前後に過ぎないにもかかわらず、豚が太って見える理由は一体どこにあるのでしょうか。動物解剖学の観点からその身体構造を紐解くと、人間が「太っている」と錯覚してしまう3つの決定的な視覚トラップが存在します。
第1の要因は、首のくびれの喪失と樽型の胴体構造です。豚の骨格は頭骨から肩、胸郭、腹部にかけてが太い筋肉で一直線に繋がっており、人間のようなウエストのくびれが構造上存在しません。さらに四肢が極端に短く、重い体幹を地面すれすれで支えているため、シルエット全体が押し潰されたような円筒形に見えてしまいます。
第2の要因は、草食寄りの雑食動物特有の発達した巨大な消化器官です。食べた飼料を大量に消化・吸収するため、腹腔内には長大な腸管と重厚な内臓が詰まっています。この巨大な内臓群が下腹部を外側へと押し広げるため、お腹がぽっこりと垂れ下がったような外観を呈します。
そして第3の要因が、脂肪の沈着パターン(皮下脂肪の集中)です。人間の場合、中年以降の肥満は内臓の周りに脂肪がつく「内臓脂肪型」が多く見られますが、豚は内臓脂肪が極めて少なく、脂肪のほとんどが皮膚のすぐ下にある皮下組織に集中します。分厚い皮膚と皮下脂肪のクッションが筋肉の筋(スジ)や骨の凹凸をすっぽりと包み隠してしまうため、外見上は筋肉のカットが一切見えず、つるんとした丸みを帯びた輪郭になります。この解剖学的特徴が合わさることで、中身は筋骨隆々であるにもかかわらず、外見はふくよかに見えてしまうのです。