幼虫の成長サイクルにおいて、体重増加の8割以上は秋(9月〜11月)に集中しています。孵化後間もない小さな1齢・2齢幼虫は、わずか2ヶ月足らずで親指ほどの3齢(終齢)幼虫へと急激に脱皮を繰り返します。大型個体(オスで75〜80mmオーバー)を狙うブリーダーの間で共有されている鉄則は、「冬を迎える前にいかに体重を乗せるか」という一点です。
秋のタイミングにおけるマット交換は、幼虫が貪欲に摂食活動を行うため、ケース表面にフンが目立ち始めたら躊躇なく行います。目安としては10月上旬〜中旬、そして越冬に入る直前の11月下旬の計2回です。この時期に高栄養の発酵マットをたっぷりと食べさせ、オスの体重を30g〜35g以上に到達させることが巨大化への必須条件となります。
ここで多くの人が犯す過ちが、「フンを完全に捨てて、新しいマットを100%投入してしまう」ことです。幼虫の腸内には土壌バクテリアと共生する独自の消化器官が存在し、急激な環境変化は著しい摂食拒否(拒食症)を引き起こします。フン掃除を行う際は、フルイを使ってフンだけを取り除き、フンに混ざった既存のマットを全体の2〜3割ほど再利用して新しいマットと混ぜ合わせる手法が極めて有効です。これにより、バクテリア環境の連続性を保ち、幼虫へのストレスを最小限に抑えられます。
対照的に、春(4月〜5月)のマット交換は極めて慎重でなければなりません。冬眠から目覚めた幼虫は多少の摂食を行いますが、秋ほど体重は増えません。4月中旬を過ぎてからマットをごっそり入れ替えると、幼虫は落ち着きを失ってケース内を激しく動き回る「ワンダリング現象」を起こし、蓄えたエネルギーを著しく浪費して体重を落としてしまいます。春のマット補充は、フンを取り除いた分だけ上から静かに継ぎ足す程度に留めるのが鉄則です。