アニメ『るろうに剣心』のOVAシリーズにおいて、1999年の『追憶編』と2001年の『星霜編』は同じ古橋一浩監督、脚本・吉田玲子氏、音楽・岩崎琢氏という同一のメインスタッフによって制作されました。しかし、両者に対する世間の評価は驚くほど対照的です。
『追憶編』が国内外のアニメファンから「伝説の神作」と崇められているのに対し、『星霜編』が酷評される決定的な違いは、「原作の物語を補完・昇華させたか」それとも「原作の結末を解体したか」という点にあります。
『追憶編』は、原作の人誅編で語られた「幕末の抜刀斎と雪代巴の過去」をベースにしており、もともと悲劇であることが前提のストーリーでした。時代劇としての圧倒的な考証、静謐で美しい演出、徹底したリアリズムが過去編の持つ切なさと完璧に合致し、原作以上の深みを生み出すことに成功したのです。
一方で『星霜編』は、原作が辿り着いた希望あるハッピーエンドをあえて覆し、監督独自の死生観を投影したオリジナル展開を主軸に据えました。原作を愛するファンにとって、苦難を乗り越えて掴み取ったはずの幸福を一方的に奪い去られた感覚が強く、このアプローチの差が天と地ほどの評価の乖離を生む結果となりました。