日本水泳史において最も鮮烈なハイライトの一つが、1988年ソウルオリンピックの男子100メートル背泳ぎ決勝です。当時、世界記録保持者であったアメリカの強豪デビッド・バーコフ氏が、スタート直後に水中に長く潜る「バサロキック」で世界を席巻していました。
これに対抗すべく、鈴木氏と名匠・鈴木陽二コーチが編み出したのが、極限まで息を止めて水中を直進する超攻撃的プランでした。スタート直後、鈴木氏は水深約1メートルの水底すれすれを突き進み、21回のバサロキックで実に30メートル以上を潜水。水面に浮上した時点でバーコフ選手と並び立ち、終盤の激しいデッドヒートの末、わずか0.13秒差の55秒05(当時の日本新記録・アジア新記録)でタッチ板を捉えて逆転勝利を飾りました。
この金メダルは、1972年ミュンヘン五輪の田口信教氏・青木まゆみ氏以来、実に16年ぶりとなる日本競泳陣の快挙であり、アジア人として背泳ぎ種目初の金メダル獲得という歴史的偉業となりました。