亀老山展望公園を訪れた人が最初に驚くのは、山頂にそびえ立つはずの一般的なタワーが見当たらない点です。この展望施設は、新国立競技場などを手掛けた世界的建築家・隈研吾(くま けんご)氏が設計し、1994年に完成しました。当時の日本建築界において大きな転換点となったエポックメイキングな作品として知られています。
開発によって削られた山頂の自然景観を再生するため、建物を地中に埋め込み、その上に植林を施して山本来の尾根のラインを復元する「見えない建築(埋没型建築)」という革新的なコンセプトが採用されました。来訪者は地中に潜り込むようなスリット状のスロープや木製デッキを進み、回廊を抜けた瞬間に視界が一気に開け、瀬戸内海の多島美が目の前に広がるドラマチックな空間構成を体験できます。
自然を支配するのではなく、環境と建築を完全に調和させたこのデザインは「JIA環境建築賞」をはじめ国内外で数々の賞を受賞しました。コンクリート打ち放しの無機質な直線と、温かみのある木製デッキ、そして空と海の青が交錯する幾何学的な美しさは、建築ファンならずとも思わず息をのむ空間美を誇っています。