一大ブームの最中には「人面犬」や「口裂け女」に並ぶオカルト・都市伝説として扱われることも多かった人面魚ですが、生物学的・科学的な検証によってその正体の理由は明快に証明されています。
まず生物学的な観点から見ると、人面魚の種類は一般的なコイ(錦鯉)です。特に鱗が少なく頭部の凹凸が目立ちやすい「ドイツゴイ」の血統を引く個体や、全体が金色・銀色に輝く「黄金(オウゴン)」と呼ばれる品種において、この現象が顕著に現れます。コイの頭部には以下のような構造的特徴が存在します。
- 目に見える部分:頭部前方の両脇にある「鼻孔(嗅窩)」や「眼窩の上部」の窪み、または黒い斑紋。
- 鼻の筋に見える部分:頭骨の中央を通る軟骨質の隆起線(正中線)。
- 口や頬に見える部分:頭頂部両サイドの側頭筋の肉瘤(にくりゅう)の隆起と、そこに生じた陰影や色素の沈着。
これらの凹凸や皮膚模様が、上から見下ろすアングル、水面のゆらぎ、太陽光の入射角と絶妙に合致した瞬間、人間の目には精巧な「人の顔」として像を結びます。
さらに認知科学の観点で決定打となるのが、脳の錯覚現象である「パレイドリア現象(Pareidolia)」および「シミュラクラ現象」です。人間は進化の過程において、外敵や仲間を瞬時に識別するため、視野の中に「逆三角形に配置された3つの点や影」があると、無意識にそれを「人間の顔」として自動補正・認識する強力な脳内回路を持っています。水面下で揺らめくコイの頭骨パターンを、人間の脳が自発的に「目・鼻・口の揃った顔」として解釈した結果が、人面魚の真実です。