1979年に放送がスタートした金字塔的アクションドラマ『探偵物語』。松田優作が演じた工藤俊作の軽妙なアドリブや愛車ベスパを駆る姿は、当時の若者文化を決定づけた。制作を手掛けた東映の撮影現場では、彼自身が脚本や演出に深く介入し、NGテイクすらも洗練されたユーモアへと変貌させていたという有名な裏話が残されている。共演者やスタッフとの即興劇のようなやり取りは、徹底した計算と情熱の産物だった。
そして、彼の遺作となったハリウッド超大作『ブラック・レイン』(パラマウント・ピクチャーズ配給)。リドリー・スコット監督を戦慄させた冷酷なヤクザ・佐藤役のオーディション時、優作は鬼気迫る気迫で役を勝ち取った。撮影当時、病魔に侵され身体は限界に達していたにもかかわらず、痛みを隠し通してカメラの前に立ち続けた。鬼気迫る狂気と美しさが同居したその演技は、マイケル・ダグラスら共演陣をも圧倒し、世界中にその名をとどろかせたのである。