狂気の錬金術師として忌み嫌われるショウ・タッカーだが、彼の造形には恐ろしいほどの現実味がある。彼は世界征服を目論む大魔王でも、根っからのシリアルキラーでもない。評価に怯え、国家資格の失効を恐れ、自身の地位と生活を守るために切羽詰まった末に一線を越えてしまった「矮小な凡人」にすぎない。
「来年の査定が危険だった」「追いつめられていた」という彼の吐露は、現代の成果主義社会における病理そのものだ。研究不正、捏造、あるいは締め切りやノルマに追われて倫理を放棄する人間の姿と、タッカーの行いは酷く重なる。彼が怪物に見えるのは、彼の中に宿る「追い詰められた人間の卑怯さ」が、あまりにも身近でリアルだからだ。