長年ネットで拡散され続けた結果、読者の間で事実とズレた認識が定着してしまった盲点が2つ存在します。
第1の誤解は、「赤犬は単なる感情任せの悪態をついただけ」という誤認です。当時の赤犬の行動を冷静に見直せば、白ひげ海賊団の脱出準備は整っており、まともに追撃してもエースを取り逃がす可能性が高い局面でした。そこで赤犬は、エースが「海賊王実父へのトラウマ」と「白ひげへの過剰な敬愛」を抱えている弱点を見抜き、最も効果的な精神攻撃を意図的に仕掛けたと考えられます。感情に任せていたのはむしろエースの側であり、赤犬自身は極めて緻密に相手をコントロールしていました。
第2の誤解は、「白ひげ本人は敗北者呼ばわりを気にしていたのか」という点です。白ひげ自身は赤犬の言葉など一切意に介しておらず、死に際に「おれは…本当に欲しかったものが手に入った」と回想しています。財宝でも名声でもなく「家族」を求めていた白ひげにとって、ロジャーに天下を譲ったことも王になれなかったことも痛痒ではありませんでした。白ひげ本人が誇りを持って満ち足りていたにもかかわらず、その尊厳を代理で守ろうとしたエースだけが怒りに囚われてしまったという点が、この悲劇の最も痛切な構造的盲点です。