言葉の成り立ちを探ると、「馬鹿(ばか)」+愛称接尾辞「ちん」という語源構成が見えてきます。日本語には古くから「よしこちゃん」を「よしこちん」、「坊っちゃん」を「ぼっちん」と呼ぶように、親密な対象や幼小な存在に「〜ちん」を添えて親愛の情を示す語法が存在します。
この接尾辞が「馬鹿」と融合したことで生まれたのが「ばかちん」です。語尾に強調の助詞「が」が接続した「ばかちんが!」の形になると語気は強まりますが、その根底にある心理は冷淡な拒絶ではありません。
標準語圏において「バカ」「バカ野郎」と言い放つと、強い敵対心や侮蔑のニュアンスがダイレクトに相手へ突き刺さります。対して博多弁の「ばかちん」は、「まったく、手がかかる奴だ」「どうしてそんな無茶をするんだ」という相手への深い思いやりと情愛が前提に存在します。激しい怒りというよりも、「愛ゆえの歯がゆさ」を表現する独自の語彙といえます。