一般にはあまり知られていないが、靖国神社と全国の神社を傘下に収める宗教法人「神社本庁」との間には、単なる協力関係に留まらない複雑で緊迫した距離感が存在する。靖国神社は戦後の政教分離原則に基づき、神社本庁に属さない「単立宗教法人」としての道を歩んできた。この組織的独立性が、双方の意志決定や人事権を巡る思惑の違いを生み出す源泉となってきた。
神社本庁側の幹部や伝統派の神職勢力は、神道の伝統的規範や儀礼の厳格な維持を強く主張する。一方で、国際的な注目を浴び続ける靖国神社側は、現実的な政治状況や広報対応、さらには安全保障の視点を無視できない。宮司人事を巡る水面下の駆け引きでは、神社本庁との協調を模索する声と、靖国独自の自主性を重んじる声が真っ向から衝突してきた。表面上の平穏の裏で繰り広げられるこの主導権争いこそが、歴代宮司の選任に色濃く影を落とし続けているのだ。