江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の時代に編纂された『公事方御定書』の下巻(御定書百箇条)第71条には、「不届成町人百姓等切捨之留(ふとどきなるちょうにんひゃくしょうなどきりすてのひかえ)」として無礼討ちの規定が明文化されています。
この条文では、町人や百姓が武士に対して道理に合わない不届きな振る舞いに及び、武士がやむを得ず成敗した場合の取り扱いが定められています。幕府の狙いは武士に特権を与えることではなく、「無用な刃傷沙汰を抑止し、勝手な私刑(リンチ)を防ぐこと」にありました。
厳密な手続きと重いペナルティを設定することで、武士が安易に刀を抜けないよう心理的なブレーキをかけたのが、法制史における無礼討ちの真の姿です。