本作を語る上で欠かせないのが、クリープハイプの映像作品を数多く手掛けてきた映画監督・松居大悟がメガホンを取ったミュージックビデオ(MV)の存在です。
MVに出演しているのは、舞台や映像で独特の存在感を放つキャスト陣と、尾崎世界観をはじめとするメンバー本人たち。物語は、華やかなステージで歌う歌姫と、彼女に魅了されながらも現実社会のなかで鬱屈とした日々を送る人々の姿を、映画的なトーンと繊細な光のコントラストで描き出します。
松居監督の演出は、単なる歌詞の再現映像にとどまりません。ステージのスポットライトが当たっている「表」の時間と、楽屋裏や日常へと戻る「裏」の無機質な時間を対比させることで、観客が抱く憧憬と、その裏にある残酷な隔絶を容赦なく浮き彫りにしました。この映像作品が当時の音楽ファンの間で社会現象的な反響を呼び、バンドの叙情性を決定づける決定打となったことは音楽史上の紛れもない事実です。