がんの糖依存性を逆手にとったアプローチとして、臨床で最も議論を呼んでいるのがケトン食療法だ。極限まで炭水化物を減らし、脂質を優先的に摂取することで、体内のエネルギー源をブドウ糖から「ケトン体」へとシフトさせる。正常な細胞はケトン体を燃料として利用できるが、代謝が機能不全に陥っているがん細胞はケトン体をうまく利用できない。
臨床試験では、膠芽腫(グリオーマ)や進行胃がんなどの一部の症例において、腫瘍の縮小やQOL(生活の質)の改善が報告されている。だが、万能薬ではない。患者の栄養状態によっては急速な体重減少や体力低下を招くリスクもあり、自己流の極端な食事制限は極めて危険だ。腫瘍内科学の専門医による厳密な管理のもとで行われて初めて、効果を発揮する特殊な治療介入と言える。