従来の時代劇において、徳川家康といえば「老獪な狸親父」あるいは「威厳に満ちた天下人」として描かれることが通例だった。しかし、NHK大河ドラマ『真田丸』で内野聖陽が見せた演技は、そうした固定観念を根底から覆すものだった。
象徴的なのが、第5回「窮地」で描かれた「神君伊賀越え」のシーンだ。織田信長が本能寺の変で倒れた報を受け、パニックに陥りながら命からがら逃げ惑う家康。爪を噛み、目を剥き出しにし、恐怖で震える姿は視聴者に強烈なインパクトを与えた。
格好良さとは無縁の泥臭い滑稽さ。だが、その裏に透けるのは生への執着であり、泥水をすすってでも生き延びる圧倒的なリアリティだった。迫真の演技が生み出したこの人間臭さこそが、多くのファンを魅了して止まない最大の要因である。