日常会話で何気なく交わされる「やっほー(ヤッホー)」という言葉。そのルーツを言語学および登山史の観点から遡ると、ドイツ語圏の山岳地帯で使われていた歓声・呼びかけ「Joo-hoo(ヨーホ / ヨッホ)」に行き着きます。
アルプス地方のチロルやバイエルンにおいて、牧童たちが遠方の仲間へ合図を送る際や、登頂の喜びを表現する際に発していたヨーデル調の掛け声が原形とされています。英語圏でも注意を引く呼びかけとして「Yoo-hoo」が定着していますが、日本における「ヤッホー」の直接の伝来ルートは山岳カルチャーにありました。
大正末期から昭和初期にかけて、日本の知識層や学生山岳部(慶應義塾大学や京都大学など)の間で近代登山が急速に普及しました。当時の登山界では、登山の本場であったドイツ・オーストリアの技術や用語をそのまま取り入れる傾向が極めて強く、以下のようなドイツ語由来の登山用語が日本語に定着しました。
- リュックサック(Rucksack:背負い袋)
- ヒュッテ(Hütte:山小屋)
- ザイル(Seil:登山用ロープ)
- ゲレンデ(Gelände:スキー場・活動地)
- アイゼン(Steigeisen:靴底につける滑り止め金具)
こうしたドイツ山岳用語の輸入とともに、山岳部員たちが山頂で歓喜の声を上げる際の「Joo-hoo」が「ヤッホー」と音写され、一般登山者やハイカーの間へと広がっていったのが歴史的経緯です。