ダフト・パンクといえば、初期の『Discovery』などで知られるように、過去のフレンチ・ハウスやディスコのレコードから絶妙なフレーズを切り取る「サンプリングの達人」として認知されていました。そのため、「Get Lucky 元ネタ サンプリング」という疑問を持つ音楽ファンは少なくありません。
しかし、収録アルバムである『ランダム・アクセス・メモリーズ(Random Access Memories)』において、彼らはサンプリングをほぼ完全に封印するという極端な手法を選択しました。『Get Lucky』には他人の既存レコードのサンプリングは一切存在せず、100%スタジオでの生演奏によって録音されています。ロサンゼルスの名門ヘンソン・スタジオやオーシャン・ウェイで、ヴィンテージのアナログ機材と最高峰のマイキングを用いて一音一音丁寧にトラックが構築されました。
音楽理論の観点から見ても、Get Lucky コード進行は驚くほどシンプルです。楽曲全体が以下のわずか4つのコードの無限ループで構成されています。
【 Bm7 ─ D ─ F#m7 ─ E 】
この進行の特異な点は、トニック(主和音)への明確な解決を避け、ドリアン調(Bドリアン・スケール)の浮遊感を保ち続けている点にあります。終わりのないループが聴き手を催眠的なトランス状態へと誘い、ナイル・ロジャースの16分音符を細かく刻むカッティングと合わさることで、何分間聴いても耳が疲れない極上のグルーヴを生み出しているのです。
このシンプルかつ完璧な構造ゆえに、リリース直後から世界中で無数の「Get Lucky カバー」が生まれました。ジョージ・マイケル、ウィルコ(Wilco)、ドーター(Daughter)によるインディー・フォーク調のアレンジから、ペンタトニックス(Pentatonix)によるアカペラカバーまで、ジャンルを問わず再解釈され続けた事実は、楽曲自体のメロディとコードが持つ強度の高さを証明しています。