「和痛分娩は本当に痛みを和らげられるのか」「無痛分娩とは何が違うのか」という疑問は、出産を控える女性が真っ先に直面する壁です。結論から言えば、両者の最大の違いは「痛みの除痛率(痛みをどの程度まで取り除くか)」と「用いられる麻酔手技」にあります。
無痛分娩の多くは、背中の硬膜外腔に極細のカテーテルを留置し、局所麻酔薬を持続注入する硬膜外麻酔を採用しています。下半身の知覚神経をブロックすることで陣痛の痛みを7割から9割程度遮断し、意識を清明に保ちながらも陣痛痛をほとんど感じないレベルにまでコントロールします。
一方、和痛分娩は「痛みをゼロにするのではなく、恐怖や緊張をほぐし、陣痛の苦痛を和らげる(マイルドにする)」ことを目的とします。そのため、硬膜外麻酔を少量用いる施設もありますが、多くの場合は点滴麻酔(鎮痛薬の静脈注射)や筋肉注射、あるいは笑気吸入鎮痛法が用いられます。点滴麻酔ではペンタゾシン(鎮痛薬)やヒドロキシジン(鎮静薬)などが投与され、陣痛の激痛そのものを消し去るというよりは、陣痛と陣痛の合間に強い眠気をもたらして体力を温存させたり、緊張による痛みの増幅を抑制したりする効果が主となります。
痛みの主観的強度を示す痛覚スケール(VAS法:0を無痛、10を想像し得る最大の激痛とした指標)で見ると、自然分娩が「8〜10」に達するのに対し、一般的な和痛分娩は「5〜7程度」に留まります。「痛みが完全になくなる」と思い込んで分娩室に入ったプレママが、「話が違う」とパニックに陥ってしまう最大の構造的要因がここにあります。