「なぜあれほど叩かれている芸人がテレビに出続けるのか?」という疑問は、一般視聴者が最も抱きやすい不信感の一つです。しかし、キー局のバラエティ番組プロデューサーや演出担当者の視点は、一般の好感度指標とは大きく異なります。
テレビ演出において最も恐れられるのは「無難で記憶に残らないこと」です。好感度の高いタレントばかりを揃えたスタジオは、当たり障りのない平和な空間になる反面、視聴者の感情を揺さぶる「対立」「ハプニング」「ツッコミの起点」が失われます。ある民放プロデューサーは次のように実情を吐露しています。
「嫌われキャラが一人いるだけで、スタジオの空気が一気に引き締まります。彼らが理不尽な言動をしてくれるからこそ、正論を吐くMCが輝き、いじられる若手が引き立ち、番組全体にストーリーが生まれる。台本の意図をミリ単位で汲み取り、あえて自分が損な役回りを引き受けられる芸人は、業界全体でも一握りの天才だけです」
SNSやネット掲示板の書き込みを分析すると、アンチコメントを書き込むユーザーは全体のわずか数%の能動的層に過ぎないという研究結果もあります。大多数のサイレントマジョリティは、嫌われ芸人が痛烈にいじられ、最後に落とし穴に落ちたり説教されたりする様をカタルシスとして楽しんでいます。テレビビジネスにおいて、「嫌われ」は緻密に計算された視聴率獲得エンジンとして機能しているのが現場のリアルです。