基町高校のアイデンティティを象徴するもう一つの柱が、普通科の中に設置された「創造表現コース」です。公立高校でありながら、充実した専門アトリエ、CG設備、本格的な油画・日本画・彫刻・デザインの指導陣を揃え、東京藝術大学をはじめとする国内最難関美大へ毎年合格者を輩出しています。
そして、このコースの生徒たちが中心となって取り組んでいる世界的活動が「原爆の絵」の制作プロジェクトです。生徒が被爆体験証言者(被爆者)とマンツーマンで何度も対話を重ね、当時の惨状や記憶の断片、証言者の心の痛みを聞き取りながら、約1年をかけて1枚の油彩画に描き起こしていきます。
証言者の記憶を正確にキャンバスへ定着させる作業は、想像を絶する精神的負荷と責任感を伴います。生徒の手記や特番インタビューでは、「証言者の方の涙や言葉にならない思いを受け止め、自分自身の未熟さと向き合いながら筆を走らせた」という生々しい葛藤が語られています。アートを単なる自己表現で終わらせず、歴史の継承と他者理解の架け橋にするこの実践は、生徒たちに極めて深い倫理観と人間的な器の大きさを形成させています。