ネット上の情報で時折見られる「麺家いろはは本物の富山ブラックではない」という言説。これは歴史的文脈を知らないことによる誤解です。
そもそも富山ブラックラーメン 元祖のルーツは、戦後復興期の1950年代、富山大空襲の復興作業に従事する肉体労働者のために考案された一杯(西町大喜などが代表格)にあります。汗を大量にかいた労働者が「白飯を持参してスープをおかずにして食べる」ことを前提に作られたため、スープ単体では飲めないほどの極端な塩分濃度と大量の黒コショウが施されていました。
これに対し、麺家いろはが目指したのは「スープそのものを美味しく完飲できる、完成された一杯のラーメン」です。労働者のための塩分補給食という狭い枠組みから、誰もが日常的に親しめるご当地グルメへと昇華させるため、魚醤の旨味成分を活用して減塩と濃厚感の両立を成し遂げました。
つまり、塩気で白米をかきこむハードコアな「元祖おかず系」と、出汁の旨味と香ばしさを味わう「麺家いろはの進化系」は、目的と設計思想が根本から異なります。どちらが優れているかではなく、食べ手の目的によって選ぶべき対象が異なるのが本質です。