現在、全国各地の旧街道の中でも特に良好な状態で駕籠休みの名残を体感できるのが、国指定史跡となっている東海道箱根旧街道(箱根八里)です。
神奈川県箱根町の畑宿から芦ノ湖畔の元箱根へと続くルートでは、江戸幕府が整備した堅牢な石畳道が今なお約4kmにわたって続いています。このコース上にある「畑宿の一里塚」から「割石坂」「見晴茶屋跡」付近にかけて、駕籠休みの案内看板や当時の休息場所と伝わる石組みが点在しています。
実際に現地を歩いてみると、勾配が一段と急になるカーブの手前や、視界が開ける尾根筋の直前に駕籠休みの痕跡が集中していることに気づきます。周囲は鬱蒼とした杉木立に囲まれ、苔むした石畳を踏みしめながら立ち止まると、激しい息遣いで駕籠を担ぎ上げた当時の人足たちの気配が肌感覚で伝わってきます。春の新緑や秋の紅葉シーズンはもちろん、湿度の高い季節にはしっとりと濡れた石畳が独特の陰影を醸し出し、歴史ロマンを掻き立てます。