健康な人であれば数日で治るはずの靴擦れや小さな切り傷が、なぜ糖尿病患者においては足を失う事態にまで発展してしまうのでしょうか。そこには糖尿病特有の3大悪循環トリガーが存在します。
第1のトリガーは、糖尿病性神経障害の症状による「痛みの消失」です。血糖値が高い状態が長年続くと、末梢神経が傷つき、知覚が麻痺します。画鋲を踏んでも、靴擦れで皮が剥けても、まったく痛みを感じません。痛みという生体防御のアラームが鳴らないため、患者は傷口を靴で圧迫し続け、傷を広げてしまいます。
第2のトリガーは、糖尿病に伴う末梢動脈疾患(PAD/LEAD)による「血流障害」です。高血糖は足の細い血管から太い動脈まで動脈硬化を急速に進めます。心臓から送られる血液が足先まで届かなくなると、組織を修復するための酸素や栄養素が供給されず、糖尿病で靴擦れが治らない理由となります。
第3のトリガーは、「高血糖による免疫機能(白血球・好中球)の低下」です。細菌に対する抵抗力が極端に落ちているため、皮膚の亀裂から侵入した黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などが瞬く間に増殖します。神経障害で気づかず、血流障害で治らず、感染症が爆発的に広がる——この3つが合致した瞬間、足は壊疽へと突き進みます。