法務省の登記統計や帝国データバンクの企業動向調査によると、全国の法人において特例有限会社は全体の約2割強を占め続けています。新設ができないにもかかわらず、なぜこれほど多くの企業が株式会社へ変更せず、有限会社のままであり続けるのでしょうか。司法書士や税理士の相談現場、そして老舗企業の経営者の証言からその本音が浮かび上がります。
都内で3代続く金属加工メーカーの代表取締役は、取材に対して次のように明かしています。
「法改正の当時は『すぐ株式会社に変えるべきか』と悩みました。しかし顧問税理士から『任期の更新手続きもいらず、決算公告の手間もない。家族経営を続けるなら有限会社のほうが圧倒的に楽だ』と助言を受け、そのままにしました。20年経った今、無駄な手続き費用を一切払わずに済んでおり、当時の判断は正解だったと確信しています」
また、事業承継や企業法務を専門とする司法書士は、現場の実情をこう分析します。
「株式会社化の相談に来られるオーナー経営者の多くは、『社名が株式会社のほうが格好いい』というイメージ先行です。しかし、役員任期の管理義務や決算公告の法的義務について説明すると、半数近くが『それなら有限会社のまま維持したい』と踏みとどまります。有限会社は、維持管理の手間を極限まで削ぎ落とした合理的な形態なのです」