日常会話で広く使われる「マザコン」という言葉ですが、マザーコンプレックスの語源はスイスの精神科医・心理学者であるカール・グスタフ・ユングが提唱した心理学の学術概念「母性複合体(Mother Complex)」に由来します。ユング心理学における複合体(コンプレックス)とは、感情によって強く結びついた無意識下の観念の複合体を指します。
本来の学術用語が日本で大衆化した背景には、1970年代から1990年代にかけてのメディア文化が影響しています。評論家やテレビドラマを通じて「母親に過度な執着を持ち、自立できない成人男性」を揶揄・警戒する俗語として定着しました。精神分析や臨床心理学の領域では、マザコンは単なる性格ではなく、過保護とマザコンの関係に象徴される母子間の心理的共依存状態として分析されます。
マザコンの心理と原因を掘り下げると、幼少期からの養育環境が色濃く影を落としています。母親が子どもの先回合理を行い、失敗を恐れてすべてを決定してきた家庭では、子どもは自己決定の機会を奪われます。その結果、「母の期待に応えなければ存在価値がない」「母の機嫌を損ねることが最大の恐怖」という強固な無意識の縛りが形成され、肉体は大人になっても精神的なへその緒が切れない状態が作られてしまいます。