インターネット上の掲示板やSNSでは、特定の政治的主張を行う人物や外交政策を批判する文脈で「外患誘致罪で逮捕すべきだ」「売国行為は死刑だ」といった過激な言説が散見されます。しかし、これらは法的な構成要件を完全に誤解した感情論に過ぎません。
外患罪が成立するための「厳格な2大要件」
刑法第81条が成立するためには、判例・学説上、以下の2つの要件を同時に満たす必要があります。
- 外国との通謀(つうぼう):私的な連絡やスパイ活動にとどまらず、外国の政府機関や軍隊と意思を通じて協力関係を結ぶこと。
- 日本国に対する武力の行使:外国軍隊が日本に対して国際法上の武力攻撃(ミサイル攻撃、領土侵略、軍事占領など)を現実に開始・実行すること。
単に国家機密を漏洩させただけであれば特定秘密保護法違反や国家公務員法違反にとどまり、日本政府の政策に反対する活動を行っても憲法上の表現の自由の範囲内です。外国が日本に対して武力攻撃を行わない限り、外患誘致罪の既遂は成立しません。
内乱罪(刑法第77条)との違い
国家転覆を企てる重罪として「内乱罪」が挙げられますが、両者には明確な境界線があります。
- 内乱罪:日本国内の勢力(自国民など)が内部から武力を用いて政府を倒そうとする行為。
- 外患誘致罪:外部の「外国」と手を組み、外国の軍事力を使って日本を侵略・攻撃させる行為。
内乱罪の首謀者に対する法定刑は「死刑又は無期禁錮」であり、無期禁錮の選択肢が残されています。外国の武力を引き込む外患誘致罪のほうが、国家の独立を完全に滅ぼす危険性が高いとみなされ、より重い「死刑専科」とされているのです。