ネット上の情報では「夜露四苦は完全に暴走族のオリジナル造語である」と語られるケースが散見されますが、これは半分正しく、半分は誤解です。
日本語の歴史において、漢字の表意性を無視して音のみを借りる表記(仮借・しゃこう)は、万葉集の時代から綿々と続いてきた伝統です。さらに近代においては、夏目漱石が「浪漫(ロマン)」「珈琲(コーヒー)」などの当て字を定着させたように、知識層も日常的に当て字を遊んでいました。
暴走族の当て字文化における最大の独自性は、「仏」「死」「苦」「羅」「狂」といった不吉・過激・厳格なイメージを持つ重厚な漢字をあえて選好した点にあります。単に音を合わせるだけでなく、視覚的な重々しさ(黒く塗りつぶされる面積の多さ)によって自らのアウトロー性を誇示する手法は、独自のグラフィック表現だったといえます。
また、2000年代以降にロックバンド「氣志團」がリーゼントと学ラン姿で「夜露死苦!」を決め台詞として再提示したことで、威嚇の言葉から「誰もが楽しめるレトロでお茶目なエンターテインメント用語」へと決定的な意味の転換が図られました。