実写ドラマ版において、ファンが最も固唾を飲んで見守ったのが主人公・工藤新一の配役でした。初代・工藤新一を演じたのは、当時すでに若手実力派筆頭として名を馳せていた小栗旬です。このキャスティングは単なるプロデューサー主導の起用ではなく、原作者の青山剛昌氏が『花より男子』などで見せた小栗の佇まいに惚れ込み、「新一を演じられるのは彼しかいない」と熱烈なラブコールを送ったことで実現しました。当時の特番インタビューにおいて小栗自身も「世界的名作の主人公を演じる重圧は計り知れなかった」と吐露していましたが、長身痩躯のスタイリッシュなブレザー姿と、クールでありながら蘭の前で見せる不器用な表情は高い評価を獲得しました。
そして2011年のスペシャル第3弾および連続ドラマ版で2代目・工藤新一のバトンを受け取ったのが溝端淳平です。溝端は高校生探偵特有の若々しい熱血漢ぶりと、謎解きパートにおける圧倒的な長台詞を淀みなくこなす卓越した滑舌を披露しました。制作発表会見の現場取材記録によると、溝端は「小栗さんの築いた完成度を前に眠れない夜を過ごした」と語りつつも、持ち前の実直さとエネルギッシュな推理描写で独自の「新一像」を確立しました。
一方、ヒロインである毛利蘭を巡るキャスティングも見事な対比を見せました。初代の黒川智花は、新一をひたむきに待ち続ける可憐さと健気さを前面に押し出し、視聴者の共感を誘いました。原作特有の「角(ツノ)」と俗称される特徴的な前髪のフォルムをあえて実写向けに自然なウェーブヘアへと落とし込み、現実世界の女子高生としてのリアリティを担保した点は賢明な演出判断でした。2代目を務めた忽那汐里は、オスカープロモーション所属の若手筆頭として抜擢され、すらりとした手足を生かした空手アクションに果敢に挑戦。感情表現の起伏が激しい蘭の内面を瑞々しい感性で演じ切りました。