日常の軽口であれば聞き流されるタラレバも、ビジネスシーンにおいては一転して「致命的な減点対象」となります。複数の大手企業でマネジメントに携わる管理職層へのヒアリング取材でも、「部下の発言の中で最も失望するフレーズ」としてタラレバ思考を挙げる声が圧倒的多数を占めます。その理由は主に3つの構造的問題に集約されます。
第1の理由は、結果責任の放棄と他責性の露呈です。ビジネスの基本原則は「与えられた制約条件下でいかに成果を出すか」にあります。不測の事態やリソース不足が起きた際に「納期さえ長ければ」「人員が足りていれば」と言い訳を口にする人物は、暗に「失敗の原因は自分ではなく環境や他者にある」と主張していると受け取られます。当事者意識が欠落した人物に重要なプロジェクトは任せられないと判断されるのは当然の帰結です。
第2の理由は、組織の士気(モラル)を著しく削ぐ点にあります。すでに確定した過去の失敗を覆すことは物理的に不可能です。それにもかかわらず「もし〜だったら」と終わった話を蒸し返す行為は、前を向いて事態の収拾やリカバリーに奔走している同僚の集中力を削ぎ、チーム全体に無力感とフラストレーションを蔓延させます。
第3の理由は、認知心理学でいう「下向きの反事実的思考」への逃避です。人間は失敗に直面した際、自尊心を守るために「あの条件さえなければ自分は優秀だったはずだ」という架空のシナリオを作り出しがちです。しかし、この防衛機制に甘え続ける人間は、課題の本質的な原因追及を行わず、再現性のある業務改善にたどり着くことができません。