人類最強の念能力者であるハンター協会会長アイザック=ネテロと、進化の頂点に立つメルエムの対決は、作品史に残る名勝負として刻まれています。音速を超えて繰り出されるネテロの「百式観音」に対し、メルエムは千手、万手の交差を重ねるなかでわずかな呼吸の乱れや癖を分析し、ついにネテロの右腕と左脚を奪います。
全オーラを撃ち放った「零乃掌(ゼロのて)」すらもメルエムの肉体を粉砕するには至らず、武力としての勝敗は明白でした。しかし、ネテロは最期の瞬間に不気味な笑みを浮かべ、こう言い放ちます。
「お前は何も分かっちゃいねェよ……人間の底すら無い悪意(進化)を……!!」
ネテロの心臓停止とともに起爆したのは、小型爆弾「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」でした。低コストで大量生産され、小国やテロリストに好まれるこの兵器の真の恐怖は、爆発そのものの熱量ではなく、体内に注入される遅効性の毒(毒素)にありました。放射性物質のように細胞を内部から破壊し、感染者の呼気や体液を通じて周囲の生物をも二次感染させて死に至らしめる極毒です。
ユピーとプフの献身により爆心から奇跡的に蘇生したメルエムでしたが、体内に回った毒は不可逆的に彼の生命を蝕んでいました。個の強さを極限まで高めた王が、人類が蓄積してきた「テクノロジーとしての悪意・大量殺戮兵器」に搦め手から敗北するという結末は、冨樫作品ならではの痛烈な社会批評と皮肉に満ちています。