渋谷駅東口の象徴として長年君臨したビックカメラ渋谷東口店の営業終了の経緯には、複数の構造的な要因が絡み合っています。単なる一店舗の業績不振という短絡的な話ではなく、都市インフラの更新と企業戦略の合致が背景にありました。
最大の引き金となったのは、渋谷駅東口再開発計画の本格始動です。東口エリア一帯は、昭和中期から平成初期に建設された雑居ビルや商業施設が多く、建物の耐震性向上や老朽化対策が喫緊の課題とされていました。ビックカメラ渋谷東口店が入居していたビルも築年数を経ており、契約満了や街区一体の建て替えを見据えた立ち退き・統合が不可避となったのです。
さらに、ビックカメラ全社が進めていた「ドミナント戦略の見直しと店舗統合」という経営判断も見逃せません。かつては東口に本館・別館、西口側にハチ公口店と、駅を挟んで複数館を展開することでエリアを面で制圧していました。しかし、スマートフォンの普及とEC(ネット通販)の台頭により、実店舗の役割は「大量陳列」から「ショールーミングと受取拠点」へとシフトしました。ビックカメラ店舗統合の理由には、渋谷駅の東西に分散していた経営資源をハチ公口側へ集約し、収益効率を最大化する狙いがありました。
公私にわたる不動産関係者の証言によると、「東口駅前広場の再編および宮益坂下交差点周辺の高度利用計画が具体化した段階で、賃貸借契約の更新を行わず営業を終了させるロードマップが敷かれていた」とされています。都市の変革期において、東口店はその歴史的役目を全うしたといえます。