引退後、年寄・陣幕を経て、1992年に師匠から名門・九重部屋を継承した千代の富士。千代の富士の九重部屋親方時代においても、その卓越した指導力とカリスマ性は遺憾なく発揮されました。
九重親方としての指導方針は、現役時代と同様に妥協を一切許さないストイックなものでした。「稽古場は嘘をつかない」「力士は体が資本であり、食うことも稽古のうち」という哲学を徹底。弟子どもには徹底した基礎運動とぶつかり稽古を課し、怪我をしない体作りのノウハウを伝授しました。弟子たちが「稽古場に親方が座っているだけで空気が張り詰めた」「親方自身が誰よりも体を動かしていたため、一切言い訳ができなかった」と証言するように、身をもって示す指導を行っていたのです。
その指導のもとから、大関・千代大海(現・14代九重親方)をはじめ、千代天山、千代白鵬など、数多くの幕内力士が育ちました。特に千代大海は、親方の熱心な指導と愛情によって大関まで登りつめ、親方のDNAを現代に引き継ぐことになります。さらに日本相撲協会においても、広報部長や巡業部長、事業部長などの要職を歴任し、相撲人気の回復と近代的な組織改革に尽力しました。