日本刀の歴史上、現存する国宝の刀剣は100口を超えます。その頂点において、なぜ大包平だけがこれほど絶対的な賛辞を浴び続けるのか。その答えは、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて備前国(現在の岡山県東南部)で興った古備前の特徴と、刀工・包平が成し遂げた超絶的な技術にあります。
古備前派の刀剣は、優美で典雅な姿を持ちながらも、時代の古さゆえに鍛錬の傷や荒れ(肌荒れや焼き崩れなど)が残りやすい傾向にあります。しかし、大包平はその通説を真っ向から覆しました。刃長89.2cm、反り3.4cm、元幅3.6cmという、当時の合戦用太刀としても異例の雄大さを持ちながら、刀身の鍛え肌は緻密な板目肌が冴え渡り、小乱れの刃文には乱れ映りが鮮やかに立ち現れています。
近代刀剣研究の権威であり、文化財保護に尽力した本間順治(薫山)氏は、かつて自著や鑑識手記の中で「日本の刀剣の中で、これほど雄大でかつ無疵の作は他にない。まさに日本刀の最高傑作である」と最大級の賛辞を捧げました。大業物を作れば作るほど、鋼を鍛え延ばす過程で微細な傷が生じるリスクは跳ね上がります。約90cmに及ぶ巨躯でありながら、一切の欠点を見せない完璧な仕上がりこそが、大包平が「奇跡の刀」と呼ばれる決定的な根拠です。