大谷の契約に関しては、あまりのスケールの大きさと複雑な法務・金融用語の多さから、ネット上でいくつかの決定的な誤解が定着しています。事実に基づき、それらの誤認を整理・是正します。
誤解1:「後払い分のお金は球団が今まったく用意していない」
「2034年になって球団の経営が苦しくなったら支払われないのではないか」という懸念が知恵袋等で散見されますが、これは明確な誤りです。MLBの労使協定により、球団は後払い額の現在価値に相当する資金(毎年約4400万ドル以上)を、契約期間中から毎年別枠のエスクロー口座(信託管理口座)等に積み立てることが義務付けられています。つまり、ドジャースはキャッシュの全額支払いを将来に先送りしているだけで、手元の資金手当て自体は規約に沿って着実に進行しています。
誤解2:「大谷翔平は単に節税のためだけに後払いを選んだ」
一部の批判論者が唱える「税金逃れが主目的」という見方も皮相的です。無利息で約10年間資金を寝かせることは、インフレによる貨幣価値の目減り(年率2〜3%でも10年で20〜30%近くの実質的価値喪失)を意味します。もし全額を通常通り受け取り、年利4〜5%の安全なインデックスファンド等で複利運用していれば、得られたであろう運用益は数億ドルに上ります。州税の支払いを遅らせるメリットよりも、運用機会の損失(機会費用)の方がはるかに大きいのです。大谷がインフレリスクを丸呑みしてまで後払いを選んだ理由は、純度100%で「チームのペイロール削減による補強資金の創出」にありました。