『高校教師』が社会現象となった背景には、主演の真田広之だけでなく、脇を固めたドラマの豪華キャスト陣の圧倒的な存在感がありました。
とりわけ、羽村を無邪気かつどこか破滅的な純粋さで魅了していくヒロイン・二宮繭を演じた桜井幸子の熱演は、今なお日本のテレビドラマ史に残る伝説的なパフォーマンスとして語り継がれています。オーディションで数百人の候補者の中から抜擢された桜井幸子は、当時まだ19歳。父親からの異常な虐待に苦しみながら、羽村に対してひたむきな愛を捧げる複雑な少女像を、透明感溢れる佇まいと研ぎ澄まされた感受性で見事に演じ切りました。
視聴者の間で現在も関心が高いのが、桜井幸子の現在の状況です。桜井幸子は『高校教師』の後も『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』『未成年』といった野島伸司作品の常連として活躍し、NHK連続テレビ小説のヒロインなど数々の名作に出演を重ねました。しかし、2009年末に「女優として充実した日々を過ごしてまいりましたが、一人の女性として新たなステップを踏み出したい」とのコメントを発表し、惜しまれつつ芸能界を完全引退しました。
引退後は実業家男性との結婚や海外移住が報じられ、芸能界の表舞台やSNS等には一切姿を見せることなく、静かで穏やかな私生活を送っています。一切の復帰やメディア露出を行わないその徹底した姿勢が、かえって二宮繭という役柄の神聖さを永遠のものにしているとも言えます。
また、同僚教師の藤村知樹を演じた京本政樹の冷徹な狂気、繭の親友・相沢直子役を演じた持田真樹の体当たりの悲劇的な演技、そして繭の父親・二宮耕介を演じた峰岸徹の底知れぬ威圧感など、登場人物の誰もが極限の感情をぶつけ合う演技合戦が、画面から尋常ならざる緊張感を生み出していました。