なぜ事実とは異なる「難病説」がここまで強固に信じ込まれてしまったのか。そこには現代のデジタル空間におけるセンセーショナリズムと、日本芸能史における文脈の重なりという2つの心理的トラップがありました。
1点目は、父である昭和の怪優・三國連太郎の晩年像との無意識の重ね合わせです。三國連太郎もまた、晩年は削ぎ落とされたシャープな容貌で迫真の演技を見せ、最期まで役者として生き抜きました。視聴者やファンの潜在意識の中に「偉大な父の系譜」が刷り込まれていたため、息子の急激な痩身を目にした際、直感的に不治の病や老いの影を結びつけてしまったのです。
2点目は、SNSやまとめ系ブログによる情報増幅です。「激痩せ=難病闘病」というわかりやすい刺激的構図はPV(閲覧数)を集めやすく、本人の「アニサキスとポリープ手術」という論理的な説明よりも、ドラマチックな悲劇性が先行して拡散してしまいました。一度刷り込まれた視覚的ショックは、テキストによる事実訂正よりも記憶に残りやすいという認知バイアスが働いた好例といえます。