「ご飯にする?お風呂にする?それともわたくし?」という三段落としのフレーズは、特定の小説や映画がオリジナルとして一世を風靡したわけではありません。その起源は、1960年代後半から1970年代の昭和高度経済成長期にあります。
当時、夜遅くまで猛烈に働くサラリーマン夫と、家事を完璧にこなして家を守る専業主婦という構図が一般的でした。夫が帰宅した直後の選択肢といえば「食事」か「入浴」が定番。そこに当時の大衆演芸や深夜ラジオ、週刊誌の小話などが「第3の選択肢(妻自身)」を付け足すジョークを生み出し、夜の夫婦生活を匂わせる艶っぽい小噺として広まっていきました。
この構図を決定的な国民的ギャグに押し上げたのが、ザ・ドリフターズが出演していた『8時だョ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』の前半コントです。加藤茶さんや志村けんさんが演じる新婚コントにおいて、オーバーなエプロン姿の新妻役が甘ったるい声でこのセリフを放ち、会場の爆笑をさらうパターンがお茶の間に定着しました。大衆芸能のパロディ精神こそが、この名フレーズを日本中に広めた最大の立役者です。